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TEA BREAKは院長やスタッフからのメッセージコーナーです。
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 −−− 2010.03.30

予防接種を上手に受けよう〜こどももおとなも〜 2010.03.30更新
       [2009年11月の市民講座で高橋菜穂子医師が講演した内容です。]


治療困難な病気、重い合併症を起こす病気を予防するために作られたワクチン。
大きな効果が期待できる一方その効果には限界もあります。
また多くの人が不安を感じている副反応も、免疫を得るために必要な体の反応であるため心配いらないものもあれば、慎重な注意が必要なものもあります。
有益な効果を得るためにどのようなワクチンをどのように受ければいいか基本的なことをお話したいと思います。


1.予防接種の意義
予防接種は何のためにやるのか、皆さんはもうご存知ですね。
「治療が困難な病気や重い合併症を起こす病気を予防する」のが第一の目的です。
「発病を予防する、症状を軽くして重症化を防ぐ」ことは接種する本人への効果を期待するものですが、自分だけでなく、妊娠前の女性に風疹や水痘などの予防接種することでこれらの感染症による先天異常や出産前後のトラブルを予防して生まれてくるお子さんの健康を守ることもできます。
多くの個人の感染を予防することで病気の蔓延化を防止し、天然痘のように感染症そのものを無くすことも可能です。
このように個人を守ることだけでなく社会全体を守ることも予防接種の目的であり働きでもあるのです。

2.予防接種の種類
現在実際に行われている予防接種には以下のものがあります。

(1)定期の予防接種:

国が国民を守るために必要として示した予防接種で市区町村長が行うべきもの、一類疾病と二類疾病とがある
ほとんどが公費負担で、健康被害が起こったときは予防接種法による救済が行われる   
   一類疾病(受けるよう努めなければならない努力義務がある)
BCG,  DPT(百日咳・ジフテリア・破傷風)DT, ポリオ、
    MR(麻しん風疹混合ワクチン)、麻疹、風疹、日本脳炎


   二類疾病(努力義務がないもの)
    インフルエンザ  
季節性インフルエンザは65歳以上または60歳以上65歳未満で重度の障害の人のみが定期接種でそれ以外の人は任意接種です。
     

(2)任意の予防接種:

予防接種法で決められていない予防接種や、定期接種の年齢枠からはずれて接種する場合で接種するかどうかは受ける側の任意とされ原則として全額負担が必要。
健康被害についても予防接種法による救済制度は適応されず独立行政法人医薬品医療機器総合機構法による救済が行われる

おたふくかぜ、水痘、B型肝炎、A型肝炎、b型インフルエンザ菌(Hib)肺炎球菌、ワイル病秋やみ、ジフテリア、ヒトパピローマウィルス(HPV)


(3)海外渡航前に必要な予防接種:

黄熱、破傷風、狂犬病、日本脳炎、B型肝炎、A型肝炎、コレラ、 
髄膜炎菌性髄膜炎
 

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BCG :結核を予防するワクチンです。
年長児や成人の結核は急速に進行することはほとんどなく慢性に経過し早く発見してきちんと治療すれば治る病気です。しかし乳幼児にとっては急速に全身に感染して粟粒結核や結核性髄膜炎を起こしほとんどが死亡するか助かっても重篤な後遺症が残る大変恐ろしい病気です。BCGはこのような乳幼児の重篤な結核を予防する効果が最も高いので生後3ヶ月から6ヶ月未満の間に接種することが勧められます。生後3ヶ月になったらできるだけ早く受けるのがベストです。

DPT(三種混合)は百日咳、ジフテリア、破傷風を予防するワクチンです。
百日咳も結核と同様に年長児や成人では重症になることは稀ですが、乳児では無呼吸発作や脳症を起こす死亡率の高い病気です。従って乳児期早期に接種することに意義があります.年長児や成人ではワクチンの効果が切れるため百日咳が流行して乳児に感染させるので最近では年長児や成人にも三種混合を接種することが考えられるようになっています。

ジフテリアは最近の日本では極めて稀な病気になりました。しかし保菌者はまだ存在すると考えられています。ロシアではソ連崩壊の時DPTの接種がほとんどできない状態になり1990-1995年にかけて青年層を中心にジフテリアが大流行し死亡者が多数出ました。このことからもジフテリアの接種はまだ必要であることが認識されました。

破傷風はまだ日本のどこででも発生する死亡率の高い病気です(2006年117名報告)。規定の接種で基本免疫ができていれば外傷時の緊急接種は不要とされています。接種後年数が経過していれば破傷風トキソイドを1回接種することが勧められます。基礎免疫ができていなければ破傷風の危険が高いときは抗血清やγグロブリン投与が必要です。災害時などは発症の危険は高くしかも抗血清の入手は困難ですから基礎免疫をつけておくことは極めて重要です。

二種混合(DT)
DPTの効果を持続させるために年長児で接種されます。近年百日咳流行のため
年長児にもDPTが必要と考えられています。

ポリオ
1960年ポリオ患者数は5000名を越える多数に達したため当時の古井厚生大臣の英断でワクチンが緊急輸入されました。その後激減し現在は日本では国内でのポリオ発生はありません。世界でもインドなどの一部の地域に限られているため根絶も間もないと考えられています。日本でも副反応の低い不活化ワクチンへの以降が予定されています。

麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン))
麻しんは感染発症率が非常に高い疾患で症状が軽く済むことが少ないと考えられています。乳幼児では肺炎や脳炎を起こし死亡率が高く、またウィルスが脳内に持続して潜伏感染を続け数年後に神経症状を起こして死亡する亜急性硬化性全脳炎を起こすことが稀にあります。麻しんワクチンの効果が高く95%以上の確率で発症を予防するといわれています。

2007年に10―20代を中心とした年齢層に麻しんが流行し大きな社会問題になりました。ワクチンをしても免疫が弱まってしまうことが問題になりました。
しかし最も重要な原因はワクチンを受けている人の割合が少ないこと(接種率が低い)なのです。流行の始まりは未接種の人から起こります。ワクチンを受けている人は基本的には症状は軽く他人への感染力も弱いのです。この世代の人の95%が受けていればこれほどの流行は起こらなかったはずですが実際は70%くらいしか受けていなかったのです。日本のこの接種率の低さから起こる麻しんの発生と他国への持込が米国など他国からの批判を受けることになりました。

風疹は麻しんに比べ症状は軽い感染症ですが妊婦初期にかかると難聴、白内障や緑内障などの眼の異常、心疾患を持った先天異常のお子さんが生まれてくるとても不幸な病気です。妊娠前に罹ったりあるいはワクチンを受けて免疫があっても妊娠中に再度かかるとやはり先天異常児が産まれることがわかっています。ですから社会全体から風疹をなくすことが大切です。

MRワクチンはこの2つが一度に接種できます。免疫を持続するため小学校入学前にもう1回追加接種されるようになりました。

日本脳炎
日本脳炎は1950年から1967年には毎年1000−5000人の報告がありましたが予防接種が始まった1970年代後半には100人以下に減少しました。

日本脳炎患者が少なくなった理由は予防接種による効果と環境変化による効果とがあると考えられています。しかしブタからはウィルス感染を示す抗体がほぼ100%検出されること、ワクチンをしていない人の3−4%に自然抗体が見つかることなどからウィルスはまだ存在することがわかっています。

1990年までは5歳以下の患者は毎年数名出ていましたが、日本脳炎ワクチンが定期接種になった1994年以来2005年まではずっとゼロになっていました。しかし2005年に積極的勧奨が中止になり接種率が激減して2006年には3歳児の発症が報告されました。
日本脳炎で死亡する人のほとんどは高齢者ですが2007年には40歳代の女性が亡くなっています。

どうしてこの日本脳炎ワクチンが実質上中止になったのかその経緯を説明します。
2004年に13歳の中学生が日本脳炎ワクチン接種後1ヶ月以内に重症のADEM
を発症し、ワクチンによる副反応と認定されたことがきっかけになり厚生労働省が積極的には勧めないと決定しました。

ADEM(急性散在性脳脊髄炎)とは麻しんや水痘などのウィルス感染やワクチン接種後4-21日目に起こる神経疾患です。一般的には比較的予後のいい疾患で神経後遺症が10%程度起こると言われています。
原因は、
@ワクチン接種後
A感染後(麻しん、水痘、おたふく、インフルエンザなど)、
B特発性(原因不明)
があります。
予防接種後副反応として報告されたADEMは、1994年から2006年までの13年間に21件で1000万接種当り、5.03人とされています。一方、1999-2000年には全国で84例のADEMが発症しているとされています。
このことからワクチン接種後に発症したADEMが全てワクチンによるものとは限らず、偶然ワクチン接種後に発症したと考えられる例も含まれてきます

もし日本脳炎ワクチンでADEMが起こるとしたらその原因物質は何なのか。従来のマウス由来ワクチンで可能性があるものは、
@マウス脳成分、
Aマウス血清蛋白、
B不活化日本脳炎ウィルス
です。このワクチンはマウスの脳に日本脳炎ウィルスを接種して脳炎を発症させた後マウスの脳を取り出してよく洗ってウィルスを精製するという方法で作られています。高度に精製されているのでマウスの脳に由来する蛋白は検出限界以下となっています。血清蛋白についても同様です。しかしこの成分が発症の原因であると断定もできませんが可能性を否定もできないということでこのタイプのワクチンは中止されることに決まったのです。

マウスを使わないVero細胞由来の組織培養によるウィルスを使った新しいワクチンがADEMを起こさないとしたらこの@、Aが原因だったといえるでしょう。しかしBは新しいワクチンにも含まれるものですからもし原因がBだったら新しいワクチンでもADEMは起こることになります。

新しいワクチン後にADEMが発生したら私達は日本脳炎ワクチンを続けていくのかどうか決めなくてはなりません。

そして本当はワクチンが原因でないかもしれない紛れ込みのADEMが起こっても同じ選択を迫られます。
別の形で日本脳炎と戦う方法を考えていくのか、年間何人かの患者さんはあきらめてもらうしかないのか決定を迫られることになります。
新しいワクチンになってマウスの大量殺戮をしなくてよくなったことは何よりも喜ばしいことです。

インフルエンザ
人間で流行するインフルエンザにはA、B型があります。
A型はその中にウィルスの表面の抗原性の違いでHA(赤血球凝集素)とNA(ノイラミダーゼ)の2つの亜型がありHAは16種、NAは9種類ありそれぞれの組み合わせで多数の亜型ができることになります。それだけ多くの種類があるのでワクチンがなかなか効かないということが起こりますし、何度もかかるということもよく起こります。今の新型はH1N1です。当初新型インフルエンザとして恐れられていたのは鳥型でH5N1です。

以前のインフルエンザワクチンはウィルス全体を成分にした全粒子型でしたがこれは副反応が強いため副反応を起こす部分を取り除いたHAワクチンが作られ現在はこのタイプのワクチンが使用されています。
今のH1N1の新型ワクチンもHAワクチンです。全粒子型ワクチンは小児では副反応を少なくするため接種量を減らす方法が取られましたが副反応の少ないHAワクチンになっても同じ量で接種されているため乳幼児では非常に効果が低いのが現状です。接種量を増やすことを提言する医療者は多いのですが実現に至っていません。

今の新型ワクチンについても同様なので1歳未満の乳児は対象にならなかったのです。
高齢者の方がインフルエンザにかかると肺炎を併発して亡くなるリスクが高いので、特に基礎疾患を持つ高齢の方が多い老人保健施設などではインフルエンザの流行は避ける必要があります。高齢者が定期接種の対象になっているのはこういう理由からです。


おたふくかぜ
おたふくかぜは現在町田でも大変流行しています。おたふくかぜは、無菌性髄膜炎、難聴、睾丸炎、膵炎などの合併症を起こす点で是非避けたい病気です。

おたふくによる難聴は治療法がなく1000人に一人の割合で発症すると考えられています。睾丸炎は成人で起こることが多く不妊の原因になります。一般的にはおたふくいかぜは年長ほど重症になり入院例はほとんど成人です。
ですから大人にとっても有用なワクチンといえます。

ワクチンによる副反応として髄膜炎が問題になったことがありました。最近のワクチンの調査ではワクチンによる髄膜炎の発症は0.05%(10/21465人)で、自然発症による髄膜炎の1.24%(13/1051人)に比較すると極めて低いことがわかっています。今後のワクチンによる髄膜炎を減らす努力に期待したいものです。

水痘
水ぼうそうは健康なお子さんでは合併症もまれで軽症に経過することが多い病気ですが、血液疾患や癌などの基礎疾患のある人にとっては命取りになる病気です。治療薬ができたのでこのような基礎疾患のある人でも治せるようになりました。

しかしおたふくと同様年長ほど重症で入院する率が高くなりますのでワクチンは成人にも有用です。予防接種をしても完全にかからなくてすむことは殆どないのですがワクチン済みの人はとても軽症で水疱も小さく痕が残ることはありません。人にうつす力も弱いので周囲への感染も最小限ですみます。水痘ワクチン接種では神経節にウィルスが潜伏する可能性が低くなり帯状疱疹を発症する率も自然感染に比較して1/3-1/4に低下すると報告されています。

*帯状疱疹ワクチン(高力価水痘ワクチン)
免疫力が低下すると潜伏していた水痘ウィルスが再活性化して帯状疱疹になります。50歳以降増加し1000人当り6-8人が帯状疱疹に罹ると言われています。この帯状疱疹と帯状疱疹後遺症としての神経痛を予防するためにアメリカで作られたワクチンです(60歳以上が対象)。日本では認められていません。アメリカの大規模調査ではワクチンを受けない人がその後の3年間に帯状疱疹を発症するのは3.5%で、ワクチンを受けた人は1.7%という結果でした。有効率は51%です。
副反応の問題としては免疫力の低い人ほどワクチンによって帯状疱疹を発生するリスクも出てきます。このあたりの問題点がまだ日本で踏み切らない理由でしょう。

B型肝炎
健康な人ではB型肝炎は一過性の感染で終わりますが、免疫機能が未熟な新生児や乳児、病気や治療で免疫機能が低下した人達では感染が持続した状態(キャリア)が起こります。この持続感染の最も多い原因は母子感染によるものだったので1986年に母子感染防止事業が開始されました。対象児への免疫グロブリン投与とその後のワクチン接種によって母子感染は殆どなくなり、以前は40歳代のキャリア率は1.5%でしたが1997年には0.05%になりました。

現在のB型肝炎の感染の原因のほとんどは性交渉によるものです。若い人達の不特定多数との性交渉のためB型肝炎は確実に増えてきており注意が必要です。世界的にみると欧米でのキャリア率は0.2-0.9%ですがアジア、アフリカ、中東、中南米では8−15%と報告されています。最近では家族にキャリアがいなくてもB型肝炎のワクチンを希望する方が増えています。

さしあたりの適応となる人は、@キャリアの家族、Aキャリアと性的接触のある人。B頻回の血液製剤、C医療関係者、D海外長期滞在者です。しかしいつどこででも感染が起こる危険はありますからこの対象でなくても予防しておくことは賢い選択であると思います。

A型肝炎
A型肝炎は水や食品からの経口感染で起こり、小児では不顕性感染の終わることが多く発症しても軽症ですが成人ではほとんどが発病しまれに劇症肝炎や腎不全を起こすこともあります。予防接種の適応は16歳以上で3回の基礎免疫後4−5年で抗体価は低下してきます。

ヒブ(ヘモフィルスインフルエンザb菌)
インフルエンザ菌は昔インフルエンザの原因菌と誤認されたためこのような紛らわしい名前がつきましたがインフルエンザウィルスとは全く別の細菌です。

インフルエンザ菌はこどもの細菌感染症のうちで最も重要な菌で化膿性髄膜炎や菌血症を起こします。インフルエンザ菌にはaからfまでの6種があり、b型は組織侵入力が強く最も重篤な感染症を起こします。その他のタイプは一般的に多くの人の鼻腔や喉に存在し中耳炎や扁桃腺炎の原因となります。

欧米ではこのb型髄膜炎に対する関心が高くアメリカでは1990年から定期接種に組み込まれています。このワクチンの導入によってインフルエンザ菌による髄膜炎はほとんどなくなりました。

一方我が国ではインフルエンザ菌による髄膜炎の患者さんは年間500-600人と推計されています。2007年1月に日本でやっと承認され輸入ができるようになりましたが希望者に比べて輸入されるワクチンの数が少ないため3―4ヶ月以上待たされている状況です。しかも1回7000円ほどと高価で3-4回の接種が必要ですから若い世代にとっては大きな苦しい出費です。

このような状況ですから私達町田市医師会の小児科医では町田市に補助を要請するための署名活動を始めています。

肺炎球菌感染症
肺炎球菌による肺炎は高齢者、脾臓摘出した人、乳幼児では重症化しやすいので予防が望まれます。現在使用が認可されて輸入されている23価肺炎球菌多糖体ワクチンは成人には効果がありますが2歳以下の小児には効果がありません。

23価ワクチンの適応は、脾臓摘出者、65歳以上の高齢者、基礎疾患があり肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険が高い人となっています。接種後5年間は効果が持続するとされています。2回目の接種をすると注射部位の局所反応が強く現れることがあるので我が国では1回しか接種することができない規定になっていますが日本感染症学会などからは2回接種によるメリットから国内でも認めるべきであるという意見が出されています。

小児ではこの肺炎球菌は肺炎だけでなく重篤な髄膜炎を起こすため予防が望まれますが、2歳未満の小児ではこの23価ワクチンには免疫反応が未熟のため抗体産生が起こらず予防効果が出ません。このためアメリカで7価のコンジュゲイトワクチンが開発され日本でも製造販売が承認されました。(2歳未満に合計4回接種)。今後一般的に使用されていくことになっています。できればHibと同様に公費負担の対象にしたいワクチンです。

ヒトパピローマウィルスワクチン(子宮頸がん予防)
ヒトパピローマウィルスはイボの原因ウィルスです。ほとんどのいぼは良性で癌化することはありませんが、一部の特殊なパピローマウィルスが子宮頸がんを起こします。

2005年には5300人以上の女性が子宮頸がんで亡くなっています。2007年に亡くなった歌手の坂井泉水さんもこの病気でした。このウィルスによる子宮頸がんを予防するのがこのヒトパピローマウィルスワクチンです。

現在のワクチンは癌を発生させる全てのウィルス型に効くものではないので(16型と18型)100%予防できるわけではありませんが6-7割の癌を予防できます。パピローマウィルスの感染は性交渉によって起こるのでこのワクチンは9-26歳の女性が対象になりますが、10-12歳の女子が適齢と考えられています。
(初回、1ヵ月後、初回から6ヶ月後の3回)

*生ワクチンと不活化ワクチン
ワクチンには毒力を大幅に弱めた生きた生物を使う場合と、病原微生物を殺したり、毒素の活力を失わせたものを使う場合があります。生きた生物を使うのが「生ワクチン」、後者を「不活化ワクチン」と呼びます。

もう少しわかりやすく言うと、生ワクチンは弱い病原体で殆ど症状が出ない程度に軽くかからせて抗体を作るようにするものです。不活化ワクチンは病原菌の一部(抗体を産生させる成分)や毒素で予め抗体を作っておいて実際に病原菌が侵入してきたときにその抗体で発症を抑えるようにするものと言えます。

生ワクチンも不活化ワクチンも液性免疫(血中抗体)を誘導できますが、細胞性免疫(リンパ球に記憶させる)を誘導できるのは生ワクチンだけです。そのため生ワクチンのほうが一般的には長く免疫効果を保持できます。しかしその分有害な副作用が出る可能性もあります。弱毒化しているとは言え生きた微生物を使いますので極めてまれではありますが突然変異によって毒力が強い先祖がえりすることが有り得ます。

現在使われているワクチンは、毒力が弱く安定したものを選ぶという操作を繰り返してより効果があり副反応は弱いものにしてあるのです。

3.副反応
ワクチンの副反応は、
1.弱毒病原体による副反応、
2.不活化ワクチンに使われるトキソイド(毒性をなくした毒素、)や微生物由来の不活化抗原物質による副反応、
3.ワクチン製剤に含まれる 安定剤、保存剤などのよる副反応があります。

生ワクチンの副反応:
弱毒病原体によるものは、先に述べた生ワクチンで起こるものです。具体的な例を挙げると麻しんワクチン接種後3-12日頃に発熱と発疹が出ることがあります(10-15%)。これは軽くかかったことを意味します。この状態は自然に快復し治療は不要です。私達小児科医はこの症状が出ると、むしろしっかり免疫が着いたと安心します。

このような症状を全く起こさないワクチンは効果もないと言えます。以前このような副反応がないとされた麻しんワクチンを接種した人達が今回の麻しん流行時に発症した事実がわかっています。このように必要で心配のない副反応もあります。

しかし避けるべき副反応もあります。ポリオ生ワクチン接種後まれにポリオ様麻痺が発生することがありますし(300万例に1人)、ポリオを飲んだ人から排泄されたポリオウィルスが抗体のない接触者に同様の麻痺を起こす例も報告されています(250万例に1人)。またウィルスが人の腸管を通過することで毒力を復帰させることも考えられており、ポリオの自然感染がなくなった地域では不活化ワクチンへの切り替えが進められています。日本でも不活化ワクチンへの切り替えが予定されているのですがなかなか進展していません。厚労省の努力が少ないからかもしれません。

同様に結核生ワクチンBCGを免疫不全の子どもに接種すると致死的であると報告されています。先天性の免疫不全やエイズに感染した人では注意が必要です。

不活化ワクチンの副反応
不活化ワクチンには強毒病原微生物を殺菌したものと、外毒素だけを不活化(毒性をなくした)したものがあります。殺菌や不活化が不十分であると重大な症状を起こしてしまいます。最近のワクチン製造技術ではこのような問題は起こらなくなっています。殺菌した微生物を使用する場合には微生物全体を使う「全菌体ワクチン」と、有害な反応を起こす部分は除去し免疫物質を作るのに有効な部分だけを残した「成分ワクチン」とがあります。

以前百日咳ワクチンやインフルエンザワクチンが「全菌体ワクチン」であったときは副反応が強く起こり問題になりましたが「成分ワクチン」になってからは強い副反応はほとんどなくなりました。インフルエンザワクチンでHAワクチンと呼ばれているのは成分ワクチンです。ただこの成分に対するアレルギーを持つ人にはアレルギー反応が副反応として起こります。

その他の成分による副反応
ワクチンには主成分の他に安定化剤や汚染を防ぐ保存剤、抗生剤、培養細胞や培養液に含まれていた物質が含まれています。これらの成分によるアレルギー反応が起こる可能性があります。以前安定剤としてゼラチンが使われた頃はゼラチンによるアナフィラキシー反応が多く報告されましたがこのことがわかってゼラチンが除去されてからほとんど起こらなくなりました。

技術の進歩により卵の成分もアレルギーを起こさない微量に抑えることができるようになったので卵アレルギーのある人もアナフィラキシーを起こす人でなければほとんどのワクチンが接種できるようになりました。

少し前に話題になったチメロサールはワクチン内での細菌やカビの繁殖を抑えるために使われていました。チメロサールは体内でエチル水銀になることが問題視されました。エチル水銀は有機水銀ですが水俣病の原因であるメチル水銀とは異なり2週間ほどで体内から排泄されていくことがわかっています。話題になった自閉症の発生との関連もまだ不明です。

魚に含まれるメチル水銀はその有害作用は明らかですので注意が必要なので妊婦さんの魚の摂取量を控えるように言われていますがチメロサールとは別物であることは理解してください。

しかし有機水銀が入らないことが望ましいので現在チメロサールは除去されています。
安定剤として使用されていた人血清アルブミンもウィルスやプリオンによる感染のリスクが危惧されて2006年12月以降は使われていません。

Hibワクチンは製造過程の菌の培養に牛から抽出したペプトン(蛋白質)を使用しており製造しているフランスは狂牛病発生国であることから承認がなかなか進みませんでした。しかしHibによる髄膜炎は私達の周り普通に見られる病気であるのに対して、世界中で普通に接種されておりプリオン患者の発生は百億人に一人と考えられている状況ではメリットを優先した例と言えます。

ワクチンの副反応を予測することは困難ですし、副反応をゼロにすることも不可能です。ワクチンが信頼されて接種率が上がると患者発生は減りますが、病気への不安がなくなり副反応の問題が大きくなると接種率が下がり再び感染症が流行するということの繰り返しが続いています。
今の新型インフルエンザワクチンの状態がよい例です。病気への不安が強くワクチンに対する期待は実際の効果を上回り、副反応への警戒は軽視されていると言えます。冷静な判断を失いパニックに近い状態になっていると言えるでしょう。

4.予防接種の受け方
予防接種は概ね以下のようなスケジュールで接種していくことが勧められます。

   * * * * * * * * * * * * * * * *

生後3−6ヶ月に受けるべきワクチン
 BCG DPT ヒブ、肺炎球菌ワクチン、ポリオ、B型肝炎

生後7ヶ月―1歳
 ポリオ、ヒブ、肺炎球菌、MR(流行時、就園時)

1歳以降
 MR、水痘、おたふく、

3歳以降―就学前
 日本脳炎、MR2期

9-13歳
 DT(DPT) 日本脳炎 HPV

成人
 MR 水痘 おたふくかぜ

高齢者
 インフルエンザ、肺炎球菌 帯状疱疹

生後3−6ヶ月に受けるべきワクチン
 BCG DPT Hib 肺炎球菌 (ポリオ、B型肝炎)

生後7ヶ月―1歳
 MR1期 ポリオ

1歳以降
 水痘、おたふく、

3歳以降―就学前
 日本脳炎、MR2期

9-13歳
 DT 日本脳炎U期 HPV

成人
 MR 水痘 おたふくかぜ

高齢者
 インフルエンザ、肺炎球菌 帯状疱疹



最後に米国と日本の定期接種の比較表を呈示しました。欧米各国、多くのアジア諸国も米国と同じようなレベルで予防接種が定期化されているのに比べ日本の定期接種は非常に貧弱です。私達医療従事者は市民と共に日本の予防接種を充実させるため努力しなければなりません。
 
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